前者はリマスター前で
盤共に非常に状態の良い中古、後者は未開封新品でございます。
内容は言わずもがな。
ラインナップは通受け名手揃い。
Eric Clapton(Vo、G、ex-Yardbirds、John Mayall & the Blues Breakers、Cream、Blind Faith)、
Bobby Whitlock(Key、Vo、ex-Delaney & Bonnie & Friends)、
Jim Gordon(Ds、Per、ex- Delaney & Bonnie & Friends、後にTraffic、Jack Bruceセッション、Joe Cocker、George Harrison
他)、
Carl Radle(B、ex-Delaney & Bonnie & Friends、後にEric Claptonソロ・バンドに参加
)となります。
1970年10月23・24日アメリカ・ニューヨーク ”Filmore East”四公演での実況録音からの抜粋となります。
Yardbirds~John Mayall & the Blues Breakers~Cream~Blind Faith初期セッションと続いた
演奏エゴを全面に打ち出した”Guitar Hero”的な存在に疲弊したEric Clapton。
”Blind Faith”のあっけない解散後はその前座であった(Eric Clapton
自身の音楽的ルーツたる「米国南部音楽」の応用/ポピュラー化的な音楽性の)
”Delaney & Bonnie & Friends”のツアーに同行、
大好評を博します。
「The Bandのメンバーになりたかった」との思いもあり新たな音楽性を実現すべく、
そして”Delaney & Bonnie & Friends”人脈の面々を起用し初のソロ作「Eric Clapton」を制作。
嘗ての姿とは異なる音楽性ではあったものの好評を博した事で自信を得、
(金銭的に揉めていた)”Delaney & Bonnie”の構成ミュージシャンであったJim Gordon/Bobby Whitlock/Carl Radleを誘い、
結成したのがこの”Derek & the Dominos”でございます。
初ソロ作「Eric Clapton」に繋がる(Eric Clapton自身の音楽的ルーツたる)「米国南部音楽」を基とした音楽性でございますが、
英国ミュージシャン特有の「ルーツ音楽の拡大解釈/曲解」がミソ。
(バンド名から伺えますが)嘗ての演奏エゴを全面に強調した”Guitar Hero”的な役割や名声
を捨て、
あくまで楽曲重視そしてヴォーカルを中心とした演奏・アンサンブル重視の感がございます。
”Delaney & Bonnie & Friends”で学んだ音楽性を生かしておりますが、余計な装飾を外した事がミソ。
あくまでバンド形式に拘ったもので、Clapton/Whitlockのツインヴォーカルも特徴的でございます。
またゲストで当時敏腕スタジオ・ミュージシャンとしても名高かった天才故Duane Allmanの作品参加もミソ。
ブルーズ系のみならず多彩感のある演奏はEric Claptonには相当な刺激になった感があり、キャリア随一の演奏がスタジオ作で聴かれます。
Clapton/Whitlockばかりに注目が当たりますが、Jim Gordonの巧みなシンバル/タム捌きは見事なもの。
ジャズ系のルーツを感じさせるものでございます。
案外多いセッション参加でございますが、バンドという事もあり才能・技術をつぎ込んだ感のある演奏の感がございます。
(そこがEric Claptonとの対立を招いた感がございますが......................................)
Carl Radleはバンドが個性的なミュージシャン揃いという事があり一線退いて個性を出した感がある演奏でございますが、
そもそもバンドという事もあり個性強め。
但しEric Claptonとの相性は非常に良いもので、後のソロ作制作に起用となる事が判るものとなっております。
後にEric Claptonが起用するベーシスト(Dave Markee、Donald ”Duck”Dan、Nathan East、Willie Weeks等)の有り方の基礎となる感がございます。
自信作であったものの初ソロ作「Eric Clapton」から続く音楽性の変化はファンに混乱を齎した模様。
またメディアの批評も辛辣。英国ではチャートインせずという結果となります。
(「米国に行ってしまったEric Clapton」という評があり、代わりにかの”Wishbone Ash”が注目を集める事になったとか..............................................)
そこから来るバンドの不協和音のみならず、制作中にも蔓延った麻薬の問題。
またバンドであるもののEric Clapton自身は自らのリーダーバンドという姿勢からJim Gordon/Bobby Whitlockとの対立を招き、
セカンド作制作途中で崩壊。
(作曲クレジット問題が絡む感が.......................)
契約消化感のあるライヴ盤を残し消滅する事となります.............................................
アルバム制作中のJimi Hendrixの他界、バンド崩壊そして盟友Duane Allmanのあっけない死去という衝撃。
そして自己逃避から来る(バンドに蔓延し、自身が引き摺った)麻薬の問題。
Eric Claptonを苦しめていく事となります..................................................
その前述ライヴ盤”In Concert”でございますが...........................1973年1月リリースとなります。
母国英国では不評であったものの、米国では好評という状況。但し、
既にバンドは崩壊状態。
Eric Clapton自身はそれに加えて私生活の
崩壊。
(正直レコード会社の海賊盤対策もあり)渋々許可を出し(レコード会社主導で)制作された感がございます。
CDの時代に入り再発カタログに加えられる事となります。
後の1994年
Eric Clapton作品カタログ
リマスター再発企画の際に
”In Concert”にも
白羽の矢が立つ事となりますが、
これに関してはEric Claptonがリマスター再発に難色を示した感。
その折衷案として導き出されたのが、納得出来る形での改訂版として新規制作という感が窺えるものでございます.......................
さて、後者。
”In Concert”と
6曲のみ
同録音がございますが、テイク差し替え及び追加収録・リミックスがミソ。
(公演毎に変化しますが)公演当日のセットリスト再現を図った感があり四曲が新規追加、
他は後の”Crossroad”BOXに収録された二曲を含めた別テイクとなるものでございます
。
時が過ぎバンドを客観的に振り返る事が出来る状況になり、Eric Clapton自身が納得出来る形での改訂という感がございます。
そもそものライヴ録音時はまだバンドとしての求心力が健在の時期(揉め始めていた感がございますが......................)、
それに何せ名手揃いに全盛期。
悪ろう筈がございません。
案外演奏アンサンブルも非常な纏まりがございます。
”In Concert”では(バンド内に蔓延った麻薬の問題があるのでしょうか?)楽曲によってはダレる面がございましたが、
後者制作での録音時期テイク差し替えによりそれが解消された感。
リミックスや当事者関与により、作品感が強くなった感もございます。
Eric Clapton全盛期の演奏に注目が集まりますが、
(演奏エゴを全面に出したギターヒーロー的な役回りを止めた以降ではございますが........結構派手目)
Jim Gordonの演奏が非常に秀悦。
シンバル/タム捌きの巧みさは必聴。
同じジャズ系という事もあり後にかの同僚名手Jack Bruceの大傑作「Out of the Storm」に起用される事が頷けるものでございます。
また、スタジオ作以上にソウル・ミュージック色が濃い感があり、制作途中で破棄となった2ndへの音楽性移行が伺える感がございます。
時期的には(自身のThe Yardbirds後任であった)かの故名手Jeff Beckがソウル/ファンク・ミュージックとロック音楽の融合を目指して、
第二期Jeff Beck Group結成に動くという時期。
非常に興味深いものがございます。
但し、スタジオ作で重要な役割を果たした名手故Duane Allman(The Allman Brothers Band)が不在(フロリダ・タンパ公演では参加)。
その音楽的スペースの空きが気になる感がございます................................................................................
Eric Clapton自身の音楽性も随分と変化、非常に興味深い音楽性
変遷後の
時期で成熟後の客観性を持つという時代に改訂版制作となった今作。
(レコード会社主導の制作とは言えど)若気の至りという感や勢いという意味では”In Concert”ではなかろうかと.......................................................
この機会に是非。